見過ごしてない? お口のなかのにおいの元 不快な口臭のふか〜い話

 口臭というと、「歯磨きはしているから胃腸が悪いせい?」とお口以外の原因を思い浮かべがちですが、ほとんどの口臭の原因はお口の中にあります。歯周病やむし歯、舌や歯の汚れがにおいの元となっていることが多いのです。口臭ストップの早道は、歯科治療とお口のケアにあり!です。

 

においの主犯はお口の細菌!

 ミクロの世界で見ると、口臭の主犯はお口の中の細菌といえます。細菌のうち、特に歯周病菌などの酵素を嫌う菌が、悪臭をともなうにおい物質を生み出します。彼らが唾液や血液、はがれ落ちたお口の粘膜、食べかすに存在するタンパク質を分解したときに、揮発性の硫黄化合物を出すのです。

 

あなたは大丈夫?お口の中のにおいの元

 不快な口臭の元となるのは、おもに以下のようなお口の病気や汚れです。

・歯周病になっている歯周ポケット

 歯周病になっているとき、歯周ポケットの中にはプラークや歯石のほか、死んで歯ぐきや頰からはがれ落ちた細胞(老廃物)や、血液、体液、細菌の代謝物が溜まり、強いにおいを発します。

・溜まったプラーク

 磨き残しにより溜まったプラーク(歯垢)もにおいの元になります。入れ歯の方は、入れ歯自体のお掃除も欠かせません。

・象牙質に及んだ多数のむし歯

 歯の表面を覆うエナメル質はほぼ100%無機質ですが、内部の象牙質は約3割がタンパク質(コラーゲン)でできています。むし歯が進行すると象牙質のタンパク質が細菌により分解され、においを出します。むし歯が深く多いほど、においは強まります。

・被せ物やブリッジと歯ぐきの境い目

 被せ物と歯ぐきの境い目や、ブリッジのポンティック(ダミーの歯)と歯ぐきが接する面もお掃除が行き届かないことが多く、においの元になりやすいです。

・舌苔

 舌の表面は一見平坦のようですが、じつは非常に微細で長い毛足をもつじゅうたんのような構造です。舌苔は、これに新陳代謝ではがれ落ちたお口の粘膜や細菌が付着し、ベットリと厚い層になったものです。

 

 歯周病やむし歯など、お口の病気が原因のにおいは、治療をしなくては解消されません。また、プラークや舌苔がたくさん残ったままでは、ブレスケア製品でにおいをごまかそうとしても焼け石に水。歯の健康を取り戻す、または維持するついでに口臭予防もできるのですから、定期的に歯医者さんに行かない手はないですよ!

引用参考文献:nico 2019年12月号

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歯周病が進行したその歯 歯周組織再生療法で救えるかも。

 歯周病が進行すると、あごの骨をはじめ、歯のまわりの組織が失われていきます。そうなると歯を支える組織が減ってしまうため、歯の寿命にも影響が及びます。そんなときに歯を救う助けとなり得るのが「歯周組織再生療法」(以下、再生療法)という治療法です。

 

再生させるのは骨だけじゃない。

 歯を支えているのはあごの骨だけではありません。歯の根の表面にある「セメント質」や、セメント質とあごの骨のあいだにある「歯根膜」が、歯と骨を結びつけているのです。再生療法はこれらの組織を再生させることを目的とします。

 再生療法では、歯の根のまわりの組織が失われた部分に特殊な再生材料を入れるなどして再生を促します。

 歯ぐきを切り開いて歯の根を露出させ、プラークや歯石を除去してから、再生材料を充填。それから歯ぐきを元通りの位置に戻して縫合します。歯の根のまわりにはほとんど血餅ができますが、この血餅がとても重要で、これが歯を支える組織––––歯根膜やセメント質、あごの骨の変化していくのです。

 

治療の手法はいろいろあります。

 再生療法には、「エムドゲイン®ゲル」や「リグロス®」といったジェル状の材料のほか、お口の中のほかの場所から採取した骨、人口の骨補填剤(ウシやブタなどに由来)、薄い膜状の材料などが用いられます。

 とはいえ、再生療法はどんな状態の欠損でも再生できるわけではなく、欠損の範囲が広いと十分に再生できないこともあります。そのようなときには、上記の手法を組み合わせるなどして治療を行います。

 

治療を行なった後は、約2週間後に縫合したところを抜歯し、経過観察を続けて8〜9か月後に組織の再生を確認します。

 抜歯までは、治療した歯では噛まないように。また、歯ブラシを当てるのもNGです。治療した歯とそのまわりは、殺菌作用のある洗口液でケアをしましょう。歯みがきができないぶん歯科でクリーニングをしますので、週に2回は必ずご来院ください。

 抜歯後は、毛先のやわらかい歯ブラシで歯みがきを再開します。その後は1週間に1回、数週間に1回と来院していただく間隔を伸ばしながら、治療したところのチェックとクリーニングを繰り返します。

 8〜9か月たって、無事歯を支える組織の再生が確認できたら、治療を行なった歯を長くもたせるために、その後も歯科のメインテナンスに通ってくださいね。

引用参考文献:nico 2019年11月号

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奥歯がないと糖質過多に?!噛めるお口で減らす 糖と脂肪のおはなし。

奥歯を失ったままだと太りやすい?!

 奥歯を失って、不便に感じながらもいつの間にか慣れてしまい、治療を先延ばししている患者さんをときどきお見受けします。ですがこの「慣れ」こそ怖いのです。

 奥歯を失うと、咀嚼機能が低下します。すると、ラーメンやカレーライス、スナック菓子といった、軟らかくて食べやすく、簡単に満足感を得られやすいものに手が伸びやすくなります。こうした食事はカロリーオーバーを引き起こしやすい一方、筋肉量の維持に必要な動物性タンパク質や、老化を防ぎ体調を整える抗酸化物質、ビタミン、ミネラル、食物維持などに乏しく、深刻な栄養不足をまねきやすいのです。

 奥歯を失ってから、食の好みが変わってきていませんか?糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などの発症リスクを減らすために、歯科治療で噛めるお口を取り戻しましょう!

 

肉や野菜、不足していませんか?

 奥歯を失うと次第に食べにくくなるもの、その代表格が「肉と野菜」です。

 奥歯を失ってからよく噛めない状態は、本来とても強いストレスを生みます。その結果ストレスを感じずに食べられる軟らかい食事を自然と好むようになり、糖質過多、低タンパク質、低ビタミン、低ミネラルに陥ってしまう人がとても多いのです。

 タンパク質の摂取が不足すると、「サルコペニア」(骨格筋減少症)になる危険性が。これはつまずきや転倒の原因で、いま話題のフレイル(要介護状態への前段階)に直結します。くわえて、ビタミンやミネラルは、摂取したタンパク質を使って効率よく筋肉量を維持するために欠かせません。

 しっかりと栄養の摂れるお口を戻すにはどんな治療法があるのか、歯科医院でご相談いただきたいと思います。

 

噛めるようになってからもご注意を!

 奥歯にインプラントが入ると、以前のように「よく噛めるお口」が戻ってきます。ただ、私が非常に気になっているのが、急激な体重の増加です。入れ歯やインプラントの治療を終えた患者さんに、少なからず起きてくる変化だからです。

 噛まずに流し込める軟らかい食事は、歯が入っても食べやすいことに変わりはありません。そのため、放っておくと治療後も、奥歯がなかった頃の食の好みが継続してしまいます。定着した食習慣を改善するのは難しいものですが、改善をしないとますますメタボが加速し、動脈硬化や糖尿病などを発症、または重症化させかねません。

 治療が終わってよく噛めるようになったら、歯科医院や職場の栄養相談を利用して管理栄養士などの専門家の指導を受け、からだに良い食生活に戻していきましょう。

引用参考文献:nico 2019年10号

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口内炎との違い、予防のコツ etc. いまこそ知りたい!口腔がん

口腔がんってどんながん?

 「口腔がん」はお口の中にできるがんの総称です。舌、歯ぐき、口腔底、頰の粘膜、口蓋、顎の骨、唇など、歯以外のどこにでも発生する可能性があります。なかでも多いのは舌にできるがんで、約6割を占めます。

 年代・性別としては、60代以上の高齢者や男性に発症しやすい傾向があるもの、昨今では女性や若者の患者さんも増えてきています。日本では、口腔がんはずっと前から増加の一途をたどっており、現在の患者数は年1万人以上と推計されます。

 

口内炎とはどう違う?

 口内炎がすべて口腔がんになるわけではなく、口内炎がある日突然、口腔がんになるわけでもありません。口内炎のうち、粘膜の細胞の増殖に異常が起きて、ごくまれにがんになる潜在能力を有したものが口腔がんになる可能性があるのです。

 くわえて、潜在能力をもった口内炎ががんになるには、必ず「前がん病変」(がんではない状態)を経由します。そして口内炎が前がん病変を経てがんになるには、5年以上の長い年月がかかります。前がん病変も必ずがんになるわけではなく、そのまま状態が変わらないこともあります。

 とはいえ、繰り返し口内炎になる場所では絶えず細胞の増殖と修復が行われていますので、細胞に異常が起きる可能性が高まります。口内炎ができるようなお口の環境を放置するのは、やはりよくないのです。

 

「慢性的な刺激」が原因に。

 一般的にがんの原因は、食事、生活習慣(お酒とタバコ)、ウイルスだといわれていますが、口腔がんではさらにお口の粘膜への「慢性的な刺激」が原因となります。刺激が繰り返されるうち、ある時粘膜の細胞に異常が起き、口内炎から前がん病変、そして口腔がんになるのです。

 刺激には、歯が傾いていて舌やお口の粘膜にぶつかる、唇や舌を噛んでしまう、被せ物や入れ歯が当たるなどの物理的なもののほか、食品の添加物や、歯周病による炎症などの化学的なものがあります。重度のむし歯が絶えず当たる粘膜が床ずれのようになり、がんになった例もあります。

 口腔がんの早期発見には、異常を感じていなくても半年に1回は歯科で定期検診を受け、粘膜のチェックもお願いするようにしましょう。発症を防ぐために、慢性的な刺激となるお口の要因を取り除くことも大事です。万一、前がん病変が見つかった場合は、がん化を確認したらすぐに対応できるように、少なくとも3か月に1回は歯科で経過を見守ってもらえるようにしてください。

引用参考文献:nico 2019年9月号

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お口に悪いだけじゃないんです。歯周病とからだの病気

 「お口の病気である歯周病がからだの病気に関係する」という話は、みなさんも耳にしたことがあるでしょう。今月は、特に関連性が高いと考えられている病気について、進行した歯周病がどのようにかかわっているかを、現在想定されているパターンをもとにご説明します。

 

歯周病菌が脳梗塞や心筋梗塞を起こす?!

 歯周病が進行すると、腫れて出血した歯ぐきから歯周病菌が体内に侵入します。血流に乗った歯周病菌は、血管の内壁に入り込み、死んだあとにおかゆのようなかたまりとなります。すると、コレステロールが血管に沈着して動脈硬化を起こすように、かたまりとなった歯周病菌が血管を狭くし、血流を阻害するのです。これが脳の血管で起これば脳梗塞、心臓の弁で起これば心筋梗塞を起こしかねません。

 

歯周病の炎症が糖尿病を悪化させる?

 糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなり、血糖の濃度(血糖値)が慢性的に高いままになってしまう病気です。歯周病に侵された歯ぐきでは、炎症が起こっていますが、進行した歯周病の場合、歯ぐきから「炎症性物質」がからだに入り込み、血糖値を低下させるインスリンの働きを邪魔します。その結果、糖尿病が悪化すると考えられています。

 

お口の細菌たちが誤嚥性肺炎の原因に!

 誤嚥性肺炎は、本来は胃に入る食物や唾液が、誤って気管から肺に入ってしまうことが原因です。肺の中で食物や唾液に含まれていた細菌やウイルスが増殖し、肺炎を起こします。歯周病になっていてお口の中に細菌が多い状態だと、肺に入り込む細菌の量も必然的に多くなります。

 

歯周病が早産や低体重児出産を招く?!

 歯周病による炎症性物質の増加は、妊娠中の母親のからだに作用し、子宮の収縮を引き起こす恐れがあります。子宮の筋肉が収縮した結果、赤ちゃんが押し出されて予定より早く生まれてしまうのです。また、歯周病菌が子宮内部に感染して早産を促す可能性も指摘されています。

 炎症が起きている歯ぐきは傷口と同じで、歯周病菌が体内に流れ込む入口になります。「歯ぐきから血が出る」という方はできるだけ早く歯科で治療を。炎症のもとであるプラークと、プラークがたまる足場となる歯石が除去されれば、炎症は徐々に治まります。

 

 今は異常はないと感じている方も油断は禁物。少なくとも半年に1回は、歯科でメインテナンスを受けてくださいね。

引用参考文献:nico 2019年8月号

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ただの当座の歯と思ったら大間違い。知ってる?仮歯のだいじな役割

 歯の根の治療中や被せ物の製作中など、治療している最中の歯にかぶせる「仮歯」。取れやすく割れやすいので、患者さんにとってはやっかいな歯かもしれません。

 でも仮歯には、治療のクオリティを上げ、患者さんの歯を守るだいじな働きがあります。仮の歯だからどうでもいい?いいえ、決してそんなことはないんです!

 

良質な治療のための“仮歯の3大役割”!

 なぜそんな仮歯がだいじなのか、その訳をご説明しましょう。仮歯は大きく分けて3つの役割を担っています。

  • 削った歯を細菌感染や刺激から守る。

仮歯をつけずに放っておくと、そこにプラーク(細菌のかたまり)がくっつき、被せ物をかぶせる土台の歯がむし歯になってしまいます。仮歯は細菌の感染や知覚過敏から、包帯のように歯を守るのです。

  • 歯が動かないように固定する。

歯を放っておくと自然と動きます。仮歯を入れておかないと、空いたスペースに隣の歯が倒れ込んできて、本番の被せ物がピッタリ入らなくなることがあります。

  • 歯根膜の感覚を維持する。

仮歯が入っていないとその部分で噛むことがないので、歯の根の周りにある、噛む力を感じるセンサー「歯根膜」が怠けます。すると、いざ被せ物を入れたとき「当たりすぎ!」と噛む力に過剰に反応してしまいます。そこで本番に備え、仮歯を使って、噛む感覚を忘れないようにします。

 

仮歯をだいじに使うコツって?
・硬いもの、くっつくものは我慢。

 仮歯が取れたり割れたりしないように、硬い食べ物は避けましょう。グミやガム、キャラメル、おもち、求肥の和菓子などのくっつきやすい食べ物はよくありません。しばらくのあいだ我慢を。

・取れたらすぐ連絡を!

 仮歯が取れて1週間もたつと、歯が動いて本番の被せ物が入りにくくなります。もし取れたら、すぐに歯科医院にご連絡を。

・お掃除はていねいに。

 仮歯は、本番の被せ物ほどピタリと調整されていません。歯ぐきとの境目に汚れが溜まりやすいため、ていねいな歯みがきを。ただし、フロスや楊枝は仮歯に引っかかってしまうおそれがあるので使わないで。

 

 せっかく被せ物を入れるなら、お口にピッタリ収まって噛み心地の良い方がいいですよね。そのためには、本番の被せ物ができあがるまで、仮歯を壊さないように上手に付き合ってください。治療をより良いものにするために、ご協力をお願いします。

引用参考文献:nico 2019年7月号

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穴の開いたむし歯とどう違う?徹底解剖!初期むし歯

「むし歯は黒い」とは限らない!

 むし歯というと、「黒い」とか「穴が開いている」イメージがありますが、「穴の開いていない」むし歯もあります。それがむし歯のできはじめの段階である「初期むし歯」です。

 初期むし歯になっている部分は、健全な歯がもつ透明感や光沢が失われ、「白く濁った」見かけになります。歯の表面にいつの間にか白く濁った斑点ができたというなら要注意。初期むし歯の可能性が大です。初期むし歯が進行すると、やがてみなさんおなじみの「穴の開いたむし歯」になります。

 患者さんご自身が初期むし歯に気づくのはとても難しいことですので、歯科での定期的な健診をおすすめします。

 

決め手はフッ素!初期むし歯の修復

 飲食のたびに、歯の表面に付着したプラーク(細菌のかたまり)がつくる酸の作用により、歯の結晶の内部から成分が溶け出していきます。溶け出した部分は、唾液がもつ歯の修復作用により補修されていくのですが、溶け出すスピードのほうが速い期間が長く続くと、歯の結晶がスカスカになり、初期むし歯になります。

 穴の開いたむし歯は、穴をふさぐには詰め物を詰めるしかありません。しかし初期むし歯は、“あるもの”を利用すれば、元の健全な状態に戻せる可能性があります。そのあるものとは、歯みがき剤でおなじみの「フッ素(フッ化物)」です。

 フッ素には、唾液による歯の修復を促進するはたらきがあります。フッ素により修復のスピードが上がると、初期むし歯で生じた結晶のスカスカが、時間をかけて埋まっていきます(個人差はあるものの、歯の表面の白濁が薄く小さくなっていきます)。

 

歯科医院に相談しよう!

 フッ素が効果があるとはいえ、フッ素配合歯みがき剤を使っていても、適切に使えていなければ効果が半減してしまいます。また、初期むし歯ができてしまったということは、日ごろの生活がむし歯になりやすい状況だったということでもあります。

 初期むし歯を穴の開いたむし歯にさせないためには、歯みがきのしかたや歯みがき剤の使い方、食生活を見直す必要があります。それには、歯科医院でプロのアドバイスを受けるのがいちばんです。

 フッ素配合歯みがき剤を使う際に大切なのは、「すすぎはおちょこ1杯程度の水で1回程度にする」ということ。すすぎが多いと、せっかくのフッ素がお口から洗い流されてしまいます。また、歯みがき剤の濃度は、高濃度(1,450ppm)

のものが良いですよ。

引用参考文献:nico 2019年6月号

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からだに自信あり?それじゃ歯は?アスリートの歯を守りたい!

 トレーニングに励んでいるアスリートのお口って、プロやアマチュアを問わず、むし歯や歯周病になりやすいって、ご存知ですか。これにはアスリートならではの理由があります。バレーボール日本代表のメディカルチームの一員として、選手の皆さんを歯科の立場からサポートさせていただいている経験から、お話ししましょう。

 

アスリートはむし歯になりやすい!

–—–—–そう聞くと、驚くかもしれませんね。でもこれ、本当のことです。運動中は口で呼吸をするので、お口の中がカラカラに乾きますよね。唾液には本来、むし歯になりかかった歯を修復してくれる「再石灰化作用」があるのですが、唾液が乾くとむし歯のリスクが高くなってしまうのです。

 また、たくさん汗をかくと唾液の分泌自体が減りますし、疲れと空腹で糖分を摂りがちなことや、練習でヘトヘトになって就寝前の歯みがきがおろそかになりやすいことも理由と考えられます。

 

アスリートは歯ぐきが腫れやすい!

 アスリートはからだが丈夫というイメージがあります。たしかに皆さん強靭な肉体をおもちですが、体力ギリギリまでトレーニングを積むと、からだは傷んだ組織の修復で手いっぱい。そのため免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性が指摘されています。

 風邪やインフルエンザだけでなく、歯ぐきが腫れる歯周病も、お口の中の細菌が炎症を引き起こす感染症。ですからアスリートは、歯周病にも注意が必要なんです。

 

アスリートこそしっかりと予防を!

 では最後にアスリート向けに歯の健康を守るポイントをご紹介します。

 ・毎晩歯みがきを欠かさずに。

 トレーニングで疲れて、つい歯みがきをせずに寝てしまう。でもそうすると、お口の中は朝までむし歯菌や歯周病菌の楽園に。眠くてもファイト!毎晩歯みがきを。

・スポーツドリンクと賢くつきあう。

 スポーツドリンクは酸を多く含むため、長期間飲む続けると「酸蝕症」という歯が溶ける病気のリスクに。エナジードリンクやビタミン飲料、柑橘類やクエン酸も同様です。飲んだ後は水でお口をすすぐなどして、酸を洗い流すようにしましょう。

・半年に一度は歯科医院へ。

 スポーツに打ち込んでいると毎日忙しく、オフの日も歯科医院に足が向きづらいもの。でもアスリートのお口は、むし歯や歯周病、酸蝕症のリスクにさらされています。ぜひ半年に一度は歯科医院で健診を!

引用参考文献:nico 2019年5月号

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なんでイヤイヤされちゃうの?!仕上げみがきお助けマニュアル

 イヤイヤされちゃうその理由って?

 赤ちゃんの小さな前歯、かわいいですよね。はじめて下の前歯が生えてきたら、ぜひ仕上げみがきをはじめましょう。

 でもこのとき、少しだけ注意が必要です。赤ちゃんにとって「最初の歯ブラシ」は、見たことも触ったこともない「未知のもの」。いきなり歯ブラシを使うとイヤイヤされちゃうことが多いんです。お口の中を覗いたり歯に触れたりして、ちょっとずつ慣れてもらうことからはじめましょう。

 また、2歳前後からはじまるイヤイヤ期もお母さんたちの苦労の種。歯みがきタイムを楽しいと思ってもらえるように、いつもお母さんがみがいているならお父さんに交代する、YouTubeやビデオなどの歌にあわせてみがく、いろんな味の歯みがき剤を用意してお子さんに選んでもらうといった工夫をしてみましょう。

痛くない仕上げみがき ここがポイント!

 仕上げみがきでは「安全」がなによりも重要。そのためには、お子さんとお母さんの姿勢が安定していることが大事です。お母さんは床に座り、お子さんにはお膝の上であおむけになってもらいましょう。

 仕上げみがきを痛がられないコツは、「いかに視野を広げるか」です。歯ブラシの動きを目で見て確認できないと、うっかり痛いところに当ててしまいがち。お口の中は見えにくいですが、くちびるや頰を指で上手によけることで見えてきます。このとき、指先ではなく、くれぐれも指の腹でよけてください。一生懸命にみがくあまり爪を立ててしまうと、痛がられてしまいます。

 

歯が生えたらフッ素を使おう!

 フッ素には、歯を固く丈夫にし、歯の修復(再石灰化)を助けてくれるというすばらしい効果が。思うように仕上げみがきをさせてもらえない時期のむし歯予防に強い味方となるので、フッ素入り歯みがき剤は欠かさず使いましょう。

 ただし、月齢や年齢ごとに、推奨されている安全な使用量やフッ素濃度は異なります。歯の生えはじめ〜2歳くらいは、フッ素濃度500ppmの歯みがき剤を歯ブラシにちょんとつける程度。3〜5歳は同濃度のものを5mm程度歯ブラシに塗ります。

 フッ素がお口に残るほど予防効果が上がるので、うがいは「10cc程度の少ない水で1回だけに」とどめてください。歯が生えはじめた赤ちゃんなら、歯みがき後に出てくる唾液を軽くぬぐう程度でOKです。

 仕上げみがきに悩んだら、子ども専門、または子どもに慣れているかかりつけの歯科医院にご相談を。一緒に予防を担ってもらうと、肩の荷も軽くなるはずです。

引用参考文献:nico 2019年4月号

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カギは歯みがきとメインテナンス!HOW TO 歯周病の治療&予防

 

歯周病を治す“主役”はあなたです!

 歯周病の原因は、歯と歯ぐきの境目にたまる「プラーク」という細菌のかたまり。この中に潜む歯周病菌が出す毒素が、歯の周りの組織に炎症を起こします。炎症で歯を支える骨が失われると、ついには歯がグラグラになってしまいます。

 プラークは毎日お口の中にたまります。歯科医院で徹底的にプラークを取り除いても、明日になれば、またたまります。プラークを毎日取り除けるのは「あなたご自身の歯みがき」だけ。つまり、「患者さんの歯みがき=プラーク除去」こそ、歯周病の治療であり予防なのです。

 

治療はなぜ歯みがき指導から?

 歯周病の治療といえば歯科による歯石除去。でもその前に欠かせないのが、歯みがき指導です。歯ブラシの正しい当て方をマスターする前に歯石を取っても、再びプラークがたまって歯石になってしまうので、元の木阿弥になります。

 プラークが歯みがきでしっかり落とせるようになり、歯ぐきの腫れが治まると、歯石を除去するときの痛みや出血も少なくなります。

 

炎症の原因、プラークを歯石ごと除去!

 歯石とは、プラークの中にいる細菌の死骸や唾液中のカルシウムが固まった軽石状の付着物で、歯の見えるところだけでなく、歯周ポケットの奥深くにもつきます。

 歯石自体には毒性はないのですが、問題はこの中にベタベタ入り込むプラーク。歯石は歯に固くこびりつき、歯みがきでは取れません。歯石ごと取り除かないかぎりプラークは温存され、歯周病の炎症の原因を取り去ることはできないのです。

 深くなった歯周ポケットの奥にある歯石を取るには、専門的で高度なテクニックが必要。歯科の手技の出番です。何回か通って、歯石除去を受けていただきます。

 

再発予防にはメインテナンスが必須!

 治療がひと区切りしたからといって、「もうプラークをほったらかしでOK!」とはいきません。それでは炎症が再発してしまいます。炎症のない爽快なお口を維持していくためにおすすめなのが、歯科での「メインテナンス」です。

 メインテナンスでは、歯みがきへのモチベーションを取り戻し、再発しやすい要注意ポイントをあらためて確認し、取りにくい細部のプラークもすっかりお掃除できた状態で、気持ちよくお帰りいただきます。

 治療がひと区切りしたら、再発防止のためにぜひ定期的なメインテナンスを!

引用参考文献:nico 2019年3月号

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